Wednesday, March 29, 2017

グザヴィエ・ドラン『わたしはロランス』

 〈本当の自分〉を追い求めることはこんなにも美しい、と素直に思えた一方で、それは社会との隔りでもあるという現実も垣間見た。しかし、このような普通と異端との対立を超克するものも、逆説的にも、自分であれ他者であれ〈本当の自分〉を愛そうとすることなのではないか、と思わせる。

 〈本当の自分〉をめぐる生(性)に対するドラン監督の思いが作品に反映されているように思えて、不思議な高揚感に包まれた。


(グザヴィエ・ドランの作品は、いつにもまして、自分と他なるもの(人生、愛、家族など…)に直面する場であり、そこにおいて他者は、願望によって歪められずに、ありのままにある。そこには、われわれの願望充足こそないが、迷いのなかに〈気づき〉がある。)